子どものしつけは、親や保護者にとって最も難しい課題の一つかもしれません。子どもが悪い行動をしたときに、どのように対処すればよいのでしょうか？叱るべきなのか、叩くべきなのか、それとも無視するべきなのか？
このような疑問に答えるために、海外のサイトを参考に、しつけの厳しさによる子どもの成長への影響について、科学的な見解と実践的なアドバイスを紹介します。
まず、しつけの厳しさとは何を指すのでしょうか？
一般的に、しつけの厳しさとは、子どもに対して肉体的または言語的に暴力をふるうことを意味します。
例えば、叩く、つねる、引っぱる、罵る、脅す、馬鹿にするなどです。これらの方法は、しつけの目的である子どもの自制心や自尊心の育成、正しい行動の教育には効果的ではなく、むしろ逆効果であることが、多くの研究で示されています。
具体的には、しつけの厳しさは、子どもの心理的・行動的・身体的な健康に悪影響を及ぼします。心理的には、しつけの厳しさは、子どものストレスや不安、抑うつ、自己否定、自殺念慮などを引き起こす可能性があります。
行動的には、しつけの厳しさは、子どもの攻撃性や反抗性、学業成績の低下、学校中退、薬物乱用、暴力犯罪などを増加させる可能性があります。
身体的には、しつけの厳しさは、子どもの脳の発達や免疫機能に悪影響を与え、心臓病や糖尿病などの生活習慣病のリスクを高める可能性があります。
また、しつけの厳しさは、親子関係にも悪影響を及ぼします。子どもは、自分を愛してくれるはずの親や保護者から暴力を受けると、親に対する信頼や愛情が減少し、親とのコミュニケーションが困難になります。
親子関係が悪化すると、子どもは親の言うことを聞かなくなり、親の権威や影響力が低下します。これは、しつけの厳しさが、子どもの行動を一時的に抑制するだけでなく、長期的には悪化させることを意味します。
では、しつけの厳しさに代わる、より効果的で健全なしつけの方法は何でしょうか？
その一つが、ポジティブ・ディシプリンと呼ばれるアプローチです。
ポジティブ・ディシプリンとは、子どもに対して暴力や罰を用いず、子どもとの良好な関係を築き、子どもの行動に対する期待やルールを明確にし、子どもの自主性や協調性、責任感を育てることを目的としたしつけの方法です。
ポジティブ・ディシプリンを実践するためには、以下のような具体的なステップがあります。
- 子どもとの一対一の時間を作る。子どもとの良好な関係を築くためには、子どもとの一対一の時間が重要です。一日に20分でも5分でも構いません。子どもと一緒に食器洗いをしながら歌を歌ったり、洗濯物を干しながらおしゃべりしたりすることができます。大切なことは、子どもに集中することです。テレビや携帯電話は消して、子どもの目線に合わせて、二人だけの時間を楽しみましょう。
- 良い行動を見つけてほめる。親としては、子どもの悪い行動に目が行きがちですが、それでは子どもは親の注意を引くために悪い行動を繰り返す可能性があります。子どもはほめられることで、愛されていると感じ、自信がつきます。子どもが何か良いことをしたときには、見逃さずにほめてあげましょう。例えば、兄弟と5分間仲良く遊んだときや、自分で靴を履いたときなどです。これによって、良い行動を促すことができ、しつけの必要性を減らすことができます。
- 行動に対する期待やルールを明確にする。子どもが悪い行動をするのは、親の期待やルールが曖昧だったり、不適切だったりすることがあります。例えば、子どもに「部屋をきれいにしなさい」と言っても、子どもにとっては「きれい」という基準がわからないかもしれません。また、子どもに「早く寝なさい」と言っても、子どもにとっては「早く」という時間がわからないかもしれません。このような場合には、期待やルールを具体的に示すことが必要です。例えば、「部屋をきれいにするとは、おもちゃを箱にしまい、本を棚に並べ、服をクローゼットにかけることだよ」と言ったり、「早く寝るとは、8時に歯を磨いて、パジャマに着替えて、ベッドに入ることだよ」と言ったりすることです。これによって、子どもは親の期待やルールを理解しやすくなり、それに従うことができます。
- 子どもの自主性や協調性、責任感を育てる。子どもに対して、すべてを決めてあげるのではなく、子どもに選択肢や意見を与えることで、子どもの自主性や協調性、責任感を育てることができます。例えば、子どもに「今日は何を着たい？」と聞いて、子どもが選んだ服を着せたり、「今日は何を食べたい？」と聞いて、子どもが選んだ食べ物を作ったりすることです。また、子どもに「今日はどんな遊びをしたい？」と聞いて、子どもが選んだ遊びを一緒にしたり、「今日はどんな本を読みたい？」と聞いて、子どもが選んだ本を一緒に読んだりすることです。これによって、子どもは自分の意思や感情を表現し、自分の選択に責任を持つことができます。また、親との協力関係も強化されます。
- 子どもの悪い行動に対しては、論理的な結果を与える。子どもが悪い行動をしたときに、叱ったり叩いたりするのではなく、その行動に対して論理的な結果を与えることが効果的です。論理的な結果とは、子どもの行動と関連性があり、子どもにとって意味があるものです。例えば、子どもがおもちゃを片付けなかったときには、「おもちゃを片付けないと、おもちゃが壊れたりなくなったりするよ。だから、今日はおもちゃで遊べないよ」と言ったり、子どもが宿題をしなかったときには、「宿題をしないと、先生に怒られたり、テストで点数が取れなかったりするよ。だから、今日はテレビを見たりゲームをしたりできないよ」と言ったりすることです。これによって、子どもは自分の行動の結果を理解し、次回からは良い行動をすることができます。
以上のように、ポジティブ・ディシプリンは、子どもの成長にとって有益なしつけの方法です。ポジティブ・ディシプリンを実践することで、子どもは自分の感情や行動をコントロールできるようになり、親との信頼関係も深まります。
ポジティブ・ディシプリンは、一朝一夕にはできないものですが、親や保護者は、子どものために、根気よく続けることが大切です。
