日本では近年、クマによる人間への被害が増加しています。テレビでも散々ニュースになっているので、うんざりされている方も少なくないでしょう。
2023年度は10月末までに全国で180人がクマに襲われ、5人が死亡するという過去最悪の状況になっています。 この問題に対して、ネット上では「クマは臆病で人を襲わない」「殺さず保護するべき」「自然をいじくり倒した人間のせい」というクマ保護派の主張と、「クマは危険で人を殺す」「殺しても罪にならない」「人間の命が優先」というクマ殺せ派の主張が対立しています。
しかし、この対立は感情的なものであり、科学的な根拠や客観的な事実に基づいているとは言い難いものが多いです。
そこで、この記事では、クマと人間の共存は可能なのか、保護派と殺せ派の言い分はどちらが正しいのか、それぞれの主張や根拠などを中立の立場でとらえ、深堀りして考えてみたいと思います。
クマ被害が増えた原因
クマと人間の共存は可能なのかという問いに答えるためには、クマの生態や行動について知る必要があります。 日本にはツキノワグマとヒグマの2種類のクマが生息していますが、ここではより広く分布し、被害の多くを担っているツキノワグマについて話します。
ツキノワグマは、主に植物性の食物を食べる雑食性の動物です。 季節によって食べるものを変えており、春は草や芽、夏は果実や昆虫、秋はドングリやクルミなどを食べます。
クマは食物が豊富な時期には体重を増やし、冬になると冬眠し、体温や代謝を下げてエネルギーを節約しますが、完全に眠り続けるわけではなく、実は時々起きたり移動したりもしています。
基本的には人を避ける動物ですが、食物が不足すると人里に出没することがあります。
人里に出没する原因としては、以下のようなものが考えられます。
- 森林の伐採や開発による生息地の縮小や破壊
- 食物の自然変動や気候変動による不安定化
- 人間のゴミや農作物などの人工餌の誘惑
- 人間との接触に慣れてしまったクマの増加
- 個体数の増加や分布の拡大
クマが人間を襲う要因と対応策
人里に出没したクマは、人間に危害を加えることがあります。
クマによる人身被害の原因としては、以下のようなものが考えられます。
- クマが人間を襲うことで食物や縄張りを守ろうとする本能的な行動
- 人間を驚かせたり威嚇したりすることで逃げ道を確保しようとする防御的な行動
- 人間を好奇心や遊び心で追いかけたり触ったりすることで傷つけたり殺したりする偶発的な行動
- 人間を食物として狙ったり食べたりすることで捕食したり殺したりする稀な行動
クマによる人身被害を防ぐためには、クマとの遭遇を避けることが最も重要です。
ですが、ほとんどのクマが、人間と出会わないよう用心しながら活動しています。 クマは人の気配に敏感なので、クマのほうが先に人間の接近に気がついて隠れる場合が多いようです。
そこで、クマから早く気付いてもらえるよう、また、人間もクマに出会わないよう用心することが、不用意なクマとの出会いを回避することにつながります。 具体的には、以下のような対策が有効です。
- クマの出没が多い地域では、クマ鈴やラジオなどで音を出して歩く
- 餌場や巣穴に近づかない
- クマの糞や足跡などの痕跡に注意する
- クマに遭遇したら、静かに後ずさりして逃げる
- 襲われたら、頭や首を守って身を固める
- クマに餌を与えない
- ゴミや農作物などの人工餌をクマに取られないように管理する
- ク生息地に配慮した森林管理や開発を行う
両者の言い分を分析
次に、クマ保護派と殺せ派の言い分はどちらが正しいのかという問いに答えるためには、クマの保護や駆除について知る必要があります。
そもそもクマは日本の森林生態系の重要な一員であり、生物多様性の保持や森林の再生に貢献しています。
また、クマは国際自然保護連合（IUCN）のレッドリストで「軽度懸念（LC）」とされており、絶滅の危険は低いとされていますが、地域によっては個体数が減少したり、遺伝的多様性が低下したりしていることが指摘されています。
そのため、クマを保護することは、森と他の動物を守ること、そして私たちの生活を守ることにも繋がるという主張があります。 これがクマ保護派の主張です。
しかし、クマを保護することには、以下のような課題や困難があります。
これがクマ殺せ派の主張です。 しかし、クマを駆除することには、以下のような課題や困難があります。
- クマの駆除は法律や条例によって制限されており、許可や手続きが必要である
- クマの駆除は専門的な技術や装備が必要であり、安全や効果に問題がある場合がある
- クマの駆除は動物愛護や自然保護の観点から反対や批判を受ける場合がある
- クマの駆除は根本的な解決にならず、むしろクマの行動や生態に悪影響を与える場合がある
以上のように、クマと人間の共存に関しては、保護派と殺せ派の言い分はどちらも一理あると言えます。 しかし、どちらも感情的なものや偏見や誤解に基づくものが混ざっていることも否めません。 そこで、クマと人間の共存を実現するためには、以下のようなことが必要だと考えられます。
- クマの生態や行動について正しい知識を持つこと
- クマとの遭遇や被害を防ぐための対策を講じること
- クマの保護や駆除について科学的な根拠や客観的な事実に基づいて判断すること
- クマの保護や駆除について関係者や専門家と協力や協議を行うこと
- クマの生息地や生態系に配慮した森林管理や開発を行うこと
クマと人間の共存は、簡単なことではありませんが、不可能なことでもありません。
クマと人間は、長い歴史の中で、時には敵対し、時には共生し、時には尊敬し、時には愛した動物でありました。 クマと人間の関係は、私たちの文化や社会にも深く影響を与えてきました。
だからこそ、クマと人間の共存は、私たちにとって大切な課題であり、価値ある目標であると言えるのではないでしょうか。
まとめ
この記事では、クマと人間の共存は可能か、保護派と殺せ派の言い分はどちらが正しいか、それぞれの主張や根拠などを中立の立場でとらえ、深堀りして考えてみました。
結論としては、クマと人間の共存に関しては、保護派と殺せ派の言い分はどちらも一理あると言えますが、どちらも感情的なものや偏見や誤解に基づくものが混ざっていることも否めません。
そこで、クマと人間の共存を実現するためには、クマの生態や行動について正しい知識を持ち、クマとの遭遇や被害を防ぐための対策を講じ、クマの保護や駆除について科学的な根拠や客観的な事実に基づいて判断し、クマの生息地や生態系に配慮した森林管理や開発を行うことが必要だと考えられます。
クマと人間の共存は、簡単なことではありませんが、不可能なことでもありません。 クマと人間は、長い歴史の中で、時には敵対し、時には共生し、時には尊敬し、時には愛した動物でありました。
だからこそ、クマと人間の共存は、私たちにとって大切な課題であり、価値ある目標であると言えるのではないでしょうか。
